2014年5月21日水曜日

大川隆法「私がノーベル物理学賞を今受賞してもかまわない」


 2014年3月18日発刊の『もし湯川秀樹博士が幸福の科学大学「未来産業学部長」だったら何と答えるか』という、非常に長いタイトルの本が出ています。この本のまえがきには、こう書いてあるようです。
 本文中にあるように、「ゴッドパーティクル」(神の素粒子)と呼ばれる「ヒッグス粒子」の存在(二〇一三年ノーベル物理学賞)を、私は一九八〇年代に既に予言している。宗教は万学の祖なのである。
私は1980年代から既に幸福の科学の本を読んでいましたし、1991年あたりから支部にも顔を出していましたが、「大川隆法がヒッグス粒子の存在を予言した」という話は読んだことも聞いたこともありませんでした。果たして本当か?と思っていたのですが、この本の中身までは読んでいませんでした。ところが先日、この本の内容を収録した法話を聴く機会を得ることができました(2013年12月5日より公開)。非常にダラダラとした長い話が続いたのですが、後半のほうでこんなことを言っていました。
 このまえ、「フューチャー・エクスプレス」を見ておったら、今年のノーベル物理学賞はヒッグスさんの「ヒッグス粒子」で貰っておりますけれども、ゴッド・パーティクルと言われる、まあ、神の素粒子ですよね。 
 ヒッグス粒子っていうのが存在することが、だいたい、証明できたということで、二人で貰っていましたですけれども、私が1980年代にその神の素粒子の存在を予言しているということで、「フューチャー・エクスプレス」でやってて、物理学で見える原子や電子よりももっと小さなものがあって、光子あるいは霊子と言われるようなものが存在しますと。
 光そのものがあの世の幽霊のように隠れてなくなったりこの世に現れたりするようなそういう素質を持っていて、そのもう一段小さなものが存在しますと。まあ、仮に霊子と呼んでもいいですけれど、みたいなことを言っていますけれども、これはゴッド・パーティクルのことで、ヒッグス素粒子ですね。 
 だからヒッグス素粒子は1980年代に発表しているので、私がノーベル物理学賞を今受賞してもかまわないのですが、まあ、実験装置を持っていないために貰えないことにはなるんですが、それは、まあ、わかってはいるんですが。

 「フューチャー・エクスプレス」というのは、会員向けに作られた布教活動レポート動画で、数年前は私も地区長さんからDVDをよく貸してもらっていましたが、ここ最近は地区長に会っていないので、見ることができません。そこでThe Liberty Webで検索したところ、似たような記事を発見しました。おそらく、「フューチャー・エクスプレス」と同じ内容だと思います。

「神の粒子」ヒッグス粒子の存在が確定 科学がどんどん霊界に近づいていく 2013.10.04
 東京大学などが参加する欧州合同原子核研究機構(CERN)の実験チームが、物質に質量を与えたとされる素粒子「ヒッグス粒子」の発見を確定した。関連データを、7日付の欧州の物理学専門誌「フィジックス・レターズB」で発表する。
(中略) 
 物質の起源に迫るヒッグス粒子の発見は、実は、霊界と物質界の関係を解明する新しい物理学への第一歩でもある。大川隆法・幸福の科学総裁は25年前、1988年発刊の『釈迦の本心』で、すでに次のように説いていた。

 「霊の世界における仏の光が、いろいろなかたちで霊体をつくり、また、霊体のなかにある光子体をつくっているのだ。地上に現われるときには、それが霊子という核をつくり、霊子がもとになって、現代物理学でいう素粒子が誕生する。そして、素粒子がさらに大きな物質を構成していくのである」

 現代の物理学では、標準理論で説明できない「重力」の問題や、宇宙の30%を占めるといわれる暗黒物質の問題などを解明する新しい理論の登場が待たれている。どんどん「霊界」に近づく最先端の科学からは、これからも目が離せない。(紘)

 これを時間順に考えると、こうなりますよね。
  1. 1964年 理論物理学者ピーター・ヒッグスがヒッグス粒子についての論文を提出。
  2. 1988年 大川隆法『釈迦の本心』で「霊子」が素粒子の核であると述べる。
  3. 2013年3月14日 CERN(欧州原子核研究機構)がヒッグス粒子の存在を実験的に検証することに成功。
  4. 2013年10月 ヒッグス、1964年の論文に対してノーベル物理学賞を受賞。
  5. 2013年10月 『The Liberty Web』または「フューチャー・エクスプレス」で、職員がヒッグス粒子と「霊子」を関連づけた記事を書く。
  6. 2013年11月頃 「フューチャー・エクスプレス」を観た大川隆法、法話にて「霊子」=ヒッグス粒子であると断言。
  7. 2014年3月18日 この日発刊の本の前書きに「私はヒッグス粒子の存在を1980年代に予言している」と書き加える。
本当、こじつけもいいところです。大川隆法がいつ「霊子」が素粒子に質量を与えると言ったのでしょうか?しかもヒッグスは大川隆法よりもずっと前に、ヒッグス粒子がどんな性質を示すのかを理論的に予想した、ちゃんとした論文を提出しています。これでは「万学の祖」なんて言えません。

 「霊子」という言葉はもともと高橋信次も使っていたし、もっと昔からオカルト愛好家の間で使われていました。シャーリーマクレーンなども「シルバーコード」という、魂と肉体をつなぐといわれる線に言及していますが、日本では霊子線と訳されていたと思います。これは、元を辿れば神智学という19世紀のオカルト思想から拝借した空想的な概念で、別に大川隆法が初めて言ったことではありません。ましてや、最先端の素粒子論とは何の関係もありません。

 こういう難しそうな話で素人の相手を煙に巻くやりかたは、神智学も科学も同じなのですが、科学のほうが支持される理由は、その理論が計算によって数量で表現されるような精密な予測が可能であり、しかも実験によって厳しく検証されるからなのです。ピーター・ヒッグスでさえ、論文でヒッグス粒子を予言したとしても、その後実験によって検証されるまではあくまで仮説であって、ノーベル賞をもらうことはできないのです。

 ノーベル賞をもらえないのは実験装置を持っていないからではありません。もし大川が数式を使って長い論文を書き、物理学専門誌「フィジックス・レターズ」に掲載された、というのであれば、ノーベル賞をもらえる資格はあるかもしれません。ですが、「霊子とは、実はヒッグス粒子なのです」などという、他人の業績をあたかも自分がやったかのように吹聴する一文を、何の根拠もなく自分の本に書いただけでノーベル賞がもらえるなんて思うのは、あまりにも甘すぎますよ。

追記:「神の粒子」という呼称について

 実験家レオン・レーダーマンらの著書に由来する。彼は最初、ヒッグス粒子のことを、見つけるのが非常に困難であるという意味で「goddamn particle(いまいましい粒子)」という名前で紹介しようとしたが編集者によって却下され、「God particle(神の粒子)」という呼称でマスメディアに紹介されるようになったという。却下された理由はおそらく、goddamnが「クソったれ」といった下品な言葉だったからではないでしょうか。神とは何の関係もありません。


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